貧困(そして不平等)根絶は・・・
本書の「監訳者あとがき」より ― MDGsのターゲット1・A「1990年から2015年までに、1日1ドル未満で生活する人々の割合を半減させる」は、ラヴァリオンによる推計方法の確立があってはじめて、数値目標として設定されうるようになった。・・・著者は貧困(そして不平等)根絶に本気である。経済学者はWarm HeartとCool Headを持たねばならないと言われるが、著者のHeartは、Warmを超えてHotとも言ってよいぐらいに、貧困者が置かれている状況を真剣に受けとめる。貧困者の数は減っているが「消費の底」は上昇していない(SDGsの唱える「誰一人取り残さない」は、未達の課題である)、ことを重視する。自己責任論を排し、貧困という不正義を根絶するために、それを生み出している諸要因に取り組むための一国および世界レベルでの公共行動の必要を説く。この点は、現在の日本での貧困者自己責任論の横行と生活保護有資格者への給付抑制政策の推進、そして子ども・若者への公共支援の不備、という現実に照らして、特筆に値する。「貧困研究のグローバル・スタンダード」を示し「貧困と戦うバイブル」である本書が、日本での現在そして将来の貧困と取り組む上で活用されることを切に願う。ー 上・下で800ページの大作だが、図書館に購入依頼を出してみたいと思います。